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逆フィッツ・トラバース(ムーンウォーク)を初登したベルギーのショーン・ビルヌーブのインタビュー

カテゴリー: その他
Interview: Sean Villanueva O'Driscoll on the Solo First Ascent of "The Moonwalk," a.k.a. the Reverse Fitz Traverse(Rock&Ice)
"I would have kept going if there was more," Villanueva O'Driscoll told Rock and Ice about his first ascent of The Moonwalk, aka the Reverse Fitz Traverse.
先日、ベルギーのショーン・ビルヌーブ(Sean Villanueva) が、パタゴニアのフィッツロイ(Fitz Roy) をメインとするピークを縦走するフィッツ・トラバースに初めて単独で成功しました。このラインを初登したアレックス・オノルド(Alex Honnold) -トミー・カルドウェル(Tommy Caldwell) ペアとは逆のラインなため、ムーンウォークとルート名をつけています。
現在、外国人は入国できないアルゼンチンにどうやって入ったのかと思っていましたが、去年から出られなかったようです。単独ですが、いつものように楽器を持っていってますし、とにかく楽しんで登ったことが伝わってきます。
以下、ショーンのインタビュー超訳。

- エル・チャルテン(パタゴニアでのクライミングのベースの街) には長期間いるんですよね?  それは意図したものなんですか?(というか、部分的にはコロナの影響もあるかもしれませんが)。

  ここに来て 1年 1ヶ月になります。去年の 3月末にヨーロッパに戻る予定でしたが、飛行機が欠航し、その後、アルゼンチンがロックダウンとなり、ここで足止めをくらってしまいました。

どうしても戻りたい場合、大使館に連絡してヨーロッパに戻ることもできたのですが、それに見合うだけの価値があるとは思えないほど、面倒なことばかりでした。ヨーロッパの状況は最悪でしたし、私は地球上で最も美しい場所の一つにいました!巨大な遊び場に閉じ込められた子供のような気分でした。
- 今シーズンのエル・チャルテンの様子はどうですか? たぶん、普段よりもかなり静かだと思いますが。地元の人とあなただけですか?

今シーズンは非常に静かです。アルゼンチンの観光客しかいません。エル・チャルテンは 1月からアルゼンチンの観光客に開放されました。それまでは地元の人だけでした。他にも私と同じような状況の外国人が何人かいます。

地元の人たちには大変なことになっていて、ほとんどの人が観光業に頼っています。例えば私の隣人には 5人の子供がおり、彼は去年新しいビジネスを始めたのですが、最近まで収入がありませんでした。彼はここの多くの人と同じように、生きていくのに大変な思いをしています。

でも、ここの人たちはとても良い雰囲気で、心が温かくて、何でも共有してくれます。彼らは私とすべてを共有し、私を地元の人間として完全に受け入れてくれています。彼らの良い雰囲気にどれだけ感動し、感謝しているか、言葉では言い表せません。

山では登山者は非常に少ないです。今回のトラバースでは 3チームとすれ違いました。誰とでも知り合いになれると確信しています。
- フィッツ・トラバースはいつから目標にしていたのですか? 他の人にも考えていることを相談しましたか? それともあなたの頭の中だけで考えていたのですか?

まあ、気にはなっていました。最初はクライミングパートナーと一緒に話していました。メインのクライミングパートナーであるニコラ・ファブレス(Nicolas Favresse) を説得するのは苦労しなかったであろうことは間違いありません。しかし、彼はロックダウンが始まる直前に、なんとかヨーロッパに戻ることができました。長い冬の、夜の間のある時、ソロで登ろうと思い立ちました。

それは非現実的で、あまりにも困難なアイデアでしたが、それを夢見て、トポに目を通し、すべてをパズルのように解くことができるかどうかを確認するのは苦痛ではないと思いました。

ある日、私は自分自身がそれが可能であると信じていることがわかりました。現実的には 10日間必要だと思っていたのですが、パタゴニアで 10日間好天が続くことは極めて稀なので、6日間の晴天が与えられたらトライしてみようと思いました。良い天気が 6日間続くこともかなり珍しく、おそらく起こらないだろうとわかっていたので、私はかなり安心していました。

そしたら、私の誕生日に6日間の好天が与えられました。

このことを人に話すわけにはいきませんでした...きっと理解してもらえないだろうし、完全に気が狂ったと思われるだろうと確信していました。出発の日、私は 2人の人に話しました:私が住んでいる場所の友人のホアンと、地元のレジェンドでありガイドブックの著者でもあるローランド・ガリボッティ(Rolando Garibotti) です。私は彼らに、Ag de l'S から登り始めて、どこまで登れるか見てみると伝えました。

国立公園に入る前に、自分の行程を書かなければならない、クライミングの届出も出しましたが、彼らは私が気が狂っていると思うだろうと考えていました。

それでも、町に戻る前には、なぜか誰もが私が登ったことを知っていました。
- トラバースの準備はどうしましたか? どのようなトレーニングをしましたか? ルートの一部を下見しましたか? これまでに登ったことのあるピークはいくつありますか?

私の準備は、ランニング、ハングボード、ボルダリング、スポーツクライミング、重い木の幹でのリフティング、腕立て伏せ、懸垂、冷水でのスイミング、ストレッチ、可動域のトレーニング、ヨガ、太極拳、気功、瞑想、ガーデニング、音楽演奏、歌、健康的な食事、よく眠ること、イメージすることで構成されていました。

最初の 2つのピークはあらかじめトライしていました。冬には雪が多すぎて、最初のピークの麓にも近づけなかったですし、秋には Aguja De l's と Saint-Exupéry を登りましたが、強風のために断念しました。

それまでに、Saint-Exupéry、Poincenot、Fitz-Roy、Mermoz、Guillaumet を登っていましたが、それらはすべて別のルートで登っています。
 
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- フィッツ・トラバースではどのピークに登るのですか?

フィッツ・ロイのエリアには 7つの主要なピークと、いくつかの小さなピークがあります。Aguja Del'S、Saint-Exupéry、Rafael Juarez、Poincenot、Ag Kakito、Fitz Roy、Val Biois、Mermoz、Guillaamet Sur、Guillaumet main の 10ピークです。
- ローランド・ガリボッティが、フェイスブックで、ショーンは Kakito、Biois、Guillo South Summit を追加したというコメントを見ましたがその 10ピークですか? アレックス・オノルドとトミー・コールドウェルも登ったのですか? それらのピークはトラバースをより複雑にしていませんか?

  彼らはたぶん Val Biois は登っていないと思いますが、Kakito、Guillaumet South は登っていると思います。Aguja Kellogg と呼ばれる小さなピークの初登もしています。私はそこは登っていません。

私にとって、このトラバースは競技会ではなく、ただ自分自身の経験のために登っただけです。

彼らが登った小さなピークが、トラバースを複雑にすることはないですし、それぞれに数時間はかかるかもしれませんが、せっかくそこにいるのだから、ロッククライミングを楽しんでみようと思ったのです。
 
- コールドウェルとオノルドが登ったルートとは逆の方向を選んだのはなぜですか? 単独ではそっちの方が楽だと思ったからですか? それとも初登ですし、より冒険になると思ったからでしょうか?

  誰もやっていなかったですし、より冒険的に思えたからです。
- トラバースには何を持っていきましたか? 

それほど重要ではないので、あまり戦略的ではありませんでした。モチベーション、駆動力、決意が最も重要な要素です。

昔の人は信じられないようなことをしていたし、彼らのギアは、今日のように軽くて機能的なものではなかったことを自分自身に言い聞かせていました。ここに挙げたメーカーのほとんどは私のスポンサーになっています。

3ヶ月ではなく、1年以上ここで過ごしたので、私自身のギアの多くは消耗していました。ギアやウェアの多くは地元のエル・チャルテンのクライマーから借りてきたものでした。

私が持って行った装備は以下の通りです。

-10日分の食料
- 朝食と夕食:主にマッシュポテトとポレンタ、乾燥野菜、チーズ、乾燥マッシュルーム、スパイス、塩、フリーズドライのLYO Food(キャンプ用携行食の会社) のほうれん草、1/2リットルのオリーブオイル。
- ショーン自身が開発した LYO Food のカレーのフリーズドライ
- 昼食:ナッツとドライフルーツ、ハードチーズ

- 小型コンロとガス

- 衣料品
- ハードシェルジャケット
- ガルヴァナイズド・パンツ(パタゴニア)
- グレードVII・ダウン・パーカ(パタゴニア)
- R1フリースジャケット(パタゴニア)
- ナノ・エアジャケット(パタゴニア)
- キャプリーン Tシャツ 2枚(パタゴニア)
- キャプリーンベースレイヤーパンツ(パタゴニア)
- 靴下 3足
- ボクサーパンツ 2枚

- ダウンの寝袋
- カリペのアプローチシューズ(スカルパ)
- インスティンクト(スカルパ)
- テント
- スリーピングマット
- バックパックとホールバッグ
- アルミ製アイゼン
- ガリーアイスアックス(ペツル)
- アイススクリュー 1本
- リード用のロープとタグラインのロープ
- ダブルのギアラックと予備のカラビナ数枚
- ハーネス
- スリング 6本
- クイックドロー 5セット
- マイクロトラクションを 3つ
- 捨て縄
- トイレットペーパー、歯ブラシ、ヘッドランプ
- ティン・ホイッスル

終了時点で残っていた物は、4日分の予備食と250ミリのオリーブオイルだけしたが、トイレットペーパーも 1枚だけでした。トイレットペーパーはギリギリだったので、無くなる前に終わらせることができて嬉しかったです。

私の荷物は重すぎました。重さははかっていません。重すぎて荷物を背負っては登れませんでした。
- いつスタートしたのですか?

2月 5日の日の出です。
- トラバースのときの、ロープソロとフリーソロの割合は、どのくらいですか?

  すべてのクライミングをロープソロで登り、一部の簡単な箇所をフリーソロで登りました。しかし、背負って登るには荷物が重すぎました。
- ロッククライミングと雪稜、アイスクライミングの割合はどのくらいですか?

  ほとんどのエリアがロッククライミングです。唯一雪があったのは Ag. De l'S までのアプローチの氷河(1キロ) と、Fitz Roy と Guillaumet の山頂の氷(300m前後) だけでした。
- 怖い思いはしましたか?

  一番効率の良いルートを常に取っていたわけではなく、ライン取りを何箇所かで間違えていました。

初日の落石では、ロープの 3箇所が傷んでしまいました。

フィッツ・ロイの山頂までの傾斜 50度の氷は、アルミアイゼン、アイスアックス 1本、アイススクリュー 1本ではとても怖かったです...。どんな滑落でも下まで落ちてしまったでしょう。鉄製のアイゼンの方が安全だと思います。
- 天気はどうでした?

  ほとんどが晴れでしたが、南半球の南壁を登っていたので、ほとんどが日陰でした。風が強い日もありましたが、気温はほどほどでした。

フィッツ・ロイを下降中に、強風に見舞われたため、早々に懸垂下降を中止して、半日休まざるを得ませんでした。
- トラバースで最高だった瞬間は?

  すべてです。自分 1人で登ったこと、日の出を見ながら登ったこと、素晴らしい景色の中を登ったこと。
- 最も難しかったピークは?

  自分の気持ちです。
- 笛を持っていってますが、少しは吹きましたか?

  すべての山頂とビバーク中といくつかのコルで吹きました。
- 全部でどのくらいかかりましたか?

  6日です。
- このラインの呼び名は? 逆フィッツ・トラバース? 他の呼び方は何かありますか?

  「ムーンウォーク」と呼ぶつもりです。前に進んでいるように見えて 実際は後ろに移動しているダンスの動きにちなんでいます。また、素晴らしい風景や雰囲気があることと、トミーとアレックスがやったこととは逆のことをしているからです。
- この冒険の準備で一番助けてもらったのは誰ですか?

  母なる自然、ここエル・チャルテンにいるすべての友人やクライミングパートナー、そして多くの冒険を共にしてきたメインのクライミングパートナーであり、今日の私を形作ってくれたニコラ・ファブレスです。

私はメカ、フアン・パブロ・コラド、ルーカス・コルバラン、コリン・ヘイリーからギアを借りていました。

出発の日、地元のガイドブック作家であるローランド・ガリボッティに自分の計画を話すと、彼はすぐに最高のギアとウェアを引っ張り出してきて、私の消耗したギアと交換してくれた。
- あなたはパタゴニアやバフィン島、パキスタンなどでテクニカルなビッグウォールのフリークライミングで知られていますよね。でも、単独登攀ではあまり知られていません。単独で行くことの好き嫌いはありますか? 今後も単独登攀をすると思いますか?

  一人で登り、今この瞬間を生きて、その経験を楽しむのが好きです。それは私の精神疾患のセラピーです。
- これを超えるようなことはありますか? 毎年あなたの誕生日に、みんなはあなたに大きな成果を期待するでしょう!

  あはは!それほど悪くは感じませんでした。運が良かったのか、それとも準備が良かったのかは分かりません。

非常に重要な決断が幸運でした。すべてがうまくいったし、流れに乗っていました。

戦略的にも、あまり効率的ではありませんでした。ただ、自分だけの時間を過ごし、その体験を楽しむために登っただけです。
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