
スロベニアのトルボヴリェ(Trbovlje) にある、ヨーロッパで一番高い煙突に作られた、13ピッチからなる 5.14a のルートに、スロベニアのヤーニャ・ガンブレット(Janja Garnbret) とドメン・スコフィッチ(Domen Škofic) がトライした時の動画。煙突の高さは 360m、最初のオンサイトトライではトップアウトに 11時間半かかっており、最終的なレッドポイントは4日後の 2トライ目でした。2トライ目は 7時間半で完登しています。
彼らがトライしたのは昨年の 10/9 ですが、ルートセットには 8月から入っており、セットに 2ヶ月かかっています。ルートセットには、ホールドメーカーの 360HOLDS のオーナーでもあり IFSC のルートセッターでもある、サイモン・マルゴン(Simon Margon) とカタ・ビドマー(Katja Vidmar) がメインで入っています。
煙突の高さである 360m と掛けているのかもしれませんが、使ってるホールドは全て 360HOLDS だそうです。今回のルートのために 2トン、1000個近いホールドを用意しています。今回の企画は 2年前から始動しており、ほぼ垂壁の壁に、ボリュミーなホールドで壁のバリエーションを広げています。

トライした 2人はツルベで登っており、リード&フォローで 2人とも落ちずに登れたことで完登ということにしています。ヤンヤは初めてのマルチピッチ、ドメンも 10年前に一度やったきりということで、マルチピッチのトレーニングから始めています。
ヤンヤのコメント
「スタート前は少し怖かった。どっかぶりなら、落ちても空中にぶら下がるだけなのと比べると、垂壁の場合は本当に悲惨なことになるので、落ちるのが怖かった。ここでは、落ちたとき、ロープにぶら下がる前に、すぐに壁やホールドにぶつかる可能性があります。だから、最終的にリラックスして、恐怖を消すまで、何度か落ちる必要がありました」ドメンのコメント
「煙突のルートは今まで登ってきたルートとは根本的に違っていた。巨大な人工物で、かなり神秘的に感じた。違和感と未知への強い恐怖を感じたけど、ルートが本当に美しく、挑戦的だったので、すぐに煙突には親近感が湧いた。登ることに集中するようになってからは、他のことは考えなくなり、ただただ楽しんでいた。」
今回のルート名は Never Ending Story(5.14a 13ピッチ 360m) としており、各ピッチのグレードは、1P:7B、2P:7C、3P:8A、4P:7B、5P:8B、6P:7B、7P:8A+、8P:8A、9P:8A+、10P:8B+、11P:7B、12P:8A、13P:7C となっています。ほとんどが 5.13台と、かなりの高難度ルートになっています。
この煙突は元々は火力発電所で使われていたそうですが、現在は稼働しておらず、煙突だけが残されている状態です。当時は高い塔なら大気汚染の影響も少ないだろうと考えられていたため、高く作られていたようです。
今回のルートは人工壁としては世界一の長さのルートとなります。これまではスイスのルッツォネ湖(Luzzone) にあるダムに作られた 160m 5ピッチのルートが最長でした。
営業ジムではアメリカ・ネバダ州にある Base Camp というジムのビルの外壁に作られた 50m の壁になります。