フランスのゲイタン・レイモンド(Gaetan Raymond) が、先日、イギリスのトム・バラード(Tom Ballard) が初登した、イタリア・ドロミテの A Line Above the Sky(D15) を 2/21 に第 2登した時の動画。イタリアのアンジェリカ・ライナー(Angelika Rainer) もトライしていたようですが、完登には至らなかったようです。
ゲイタンも、初登したトムと同様に、フィギュア4 を使わない DTS (Dry-Tooling Style / French Style) で登っています。ゲイタンは自身のブログでフィギュア 4 を使わない DTS について詳細に解説しています。
歴史的にフィギュア 4 は、元々はフランスのトニー・ヤニロ(Tony Yaniro) がフランス・ビュークス(Buoux) の岩場で、Chouca(8a+) というルートを初登した時に使ったテクニックで、フランスでは彼にちなんで、ヤニロ(Yaniro) と呼ばれており、英語圏ではフィギュア 4 と呼んでいます。
フィギュア 4 がミックスクライミングで使われたのは、1994年にジェフ・ロウ(Jeff Lowe) が初登した、アメリカ・コロラドのベイル(Vail) にある Octopussy(M8) を登った時で、2回使われています。この衝撃的な初登シーンは、ジェフの著作で、世界的にミックスクライミングをはやらせるきっかけとなった『Ice World』の表紙に使われています。
当時の重い靴とアイゼンでは、ルーフ状の細かいフットホールドを拾うのは大変だったため、フィギュア 4が有効だったとしています。現在は垂直前後の壁でも距離を出すためにもフィギュア 4 は使われます。
で、ゲイタンやトム・バラードがフィギュア 4 を使わず、DTS にこだわる理由としては、フィギュア 4 が連続するとムーブがつまらない、昔よりもクランポンブーツ(フルートブーツ) の性能が上がっているので足を拾うのは楽になったため、岩に足を拾っていった方がムーブが面白いしハード、傾斜が強くなればなるほどリーチが出せるなどを挙げています。
デメリットとして、大きいムーブが多くなり、肩への負担が増えるため、肩を痛める可能性があると指摘しており、このスタイルにトライしたカナダのウィル・ガッド(Will Gadd) は肩を痛めたそうです。
フランスの一部のアックスコンペでは、フィギュア 4 の使用は禁止されており、フランス人が積極的に進めているスタイルなため、フレンチスタイルとも呼ばれているそうです。
ミックスクライミングでは昔から道具の変化に合わせて、技術や倫理観が変わってきた歴史があります。リーシュがなくなり、ヒールスパーがなくなり、アックスにかけていいのは手首より先だけといった感じで、よりハードさを追求するスポート性が強調されるようになってきました。
DTS は単純にムーブの取捨選択なだけな気がしますが、果たして定着するのでしょうか。
関連リンク
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