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La' Intensity - シルビア・ビダルのインタビュー

カテゴリー: 動画
毎年、辺境のビッグウォールへ単独で遠征を行なっているスペインの女性クライマー・Silvia Vidal へのインタビュー。

クライミングを始めた理由、なぜソロなのか、コミュニケーションツールを持ち込まない理由など興味深かったので、全文訳してみました。以下超訳。

こんにちは、シルビア・ビダルです。スペインのバルセロナ出身のカタルーニャ人です。クライミングを始めてから 18年が経ちました。
クライミングを始めてすぐに、金属製のクライミングギア、ハンマーやピトンなどをぶら下げて登ってる人や、壁の中でポーターレッジにぶら下がってる人達に興味が出ました。90年代の人工登攀ブームだったのです。
人工登攀をしている人はたくさんいました。週末になると、壁にはポータレッジにぶら下がっている人を見ることができました。今となってはもうまれですが。そんな人工登攀に興味が湧き、やってみたくなりました。どんな風に寝てるのか、ハンマーや金属製品をぶら下げて登る人工登攀がやってみたかったのです。それが私のクライミングのスタートです。
始めてすぐに、Pep、Masip、Julian、Pere、Ricardといった有名人達に出会い、ビッグウォールでの人工登攀の世界を目の当たりにしました。ポータレッジで寝る方法やハンマーの使い方を頑張って覚え、そしてすぐにソロでやりたくなり、友人の El Francesc にソロのやり方を教えて貰いました。ロープワークのテクニックを教えて貰い、Montserrat の岩塔で試してみました。そして、ヨセミテに行きました。エルキャピタンが私の初めてのビッグウォールです。そして次に、エルキャプのゾディアックをソロで登りました。
人工登攀は、自分にとってはとても創造的なクライミングです。どこへ行って、何をするかを考えないといけません。プロテクションにぶら下がり、プロテクションが大丈夫かどうか、どのくらい耐えられるのかの見極めが難しく、非常に大変な作業で、時間のかかるクライミングになります。
決断すること、見ること、トライすること、信じること、それが多くの時間と日数を必要とします。その壁を登るのにどれだけ時間がかかるのかを見積もると、1本のルートを登るのに多くの日数がかかるかどうかは、技術的な困難さによります。重労働のピッチ、極端に難しいピッチでは、やってることに集中しています。困難なクライミングを繰り返していると、だんだん快適になってきて、うまく気分転換ができるようになります。そんな状況でも、どんなプロテクションをどう取ればいいのかに集中できます。そして、自分を取り囲む困難な環境から切り離してくれます。ワンピッチを登り終えたとき、その登ったピッチの時間については上手く説明できません。
ソロは自分の内面からの欲求です。それが自分の生き方に繋がってきます。友達がいないから、ソロをしているわけではなく、やりたいから、必要だからやってます。一人で行きたいときと行きたくないときがあり、その時の状況と感覚が合ってるかどうかによります。一人で行くのは行きたいからであって、行きたくなかったら行くべきではありません。
僻地のビッグウォールへ、遠征計画を立てる時は複雑な戦略が必要になります。最初に、行こうと思っている場所に関する情報をできるだけ自分自身で集めなければいけません。これまで登ってきた未踏壁に関してはほとんど情報がありませんでした。どんな装備で行くかを戦略的に考えて準備する時にハンデになります。何が必要かを見積もる情報もありませんでした。壁が 500m か 1000m なのか、アプローチが 1日なのか 1週間なのかもわかりませんでした。
ソロで行くアプローチは、全ての荷物を自分一人で運ぶ必要があります。何度も同じ行程を繰り返さないといけません。先日の遠征では、食料やギアでいっぱいになった 20kg のホールバッグが 5つもありました。そして 7往復、行って帰ってを繰り返しました。結局、同じ行程を 13回歩きました。来る日も来る日も同じ行程の繰り返しです。ポーターがいれば 1日で済むことも、13回の行程を一人で繰り返す必要があります。狂っている。そんな長いアプローチも、自分にとって、心理的には良くなっていきましたが、肉体的には悪くなっていきました。壁の取付に着いたときはヘロヘロに疲れ果てていました。クライミングをまだ始めてもいないのに、非常に疲れていました。
自分の遠征では、ラジオや携帯電話やネット端末と行ったコミュニケーションツールは一切持って行きません。自分で決めた多くの誓約を変えてしまうからです。その誓約は自分にとっては一番重要なことで、高い価値を置いています。これまでににやったこと、何メーター登ったのか、どれほどのグレードを登ったのかというような、数値化できることも比較的重要ですが、自分の観点ではどのように物事をこなしたのかも重要です。このスタイルで行くことは、本当に一人で行ったと言えることです。一人で行くということは、本当に一人だと言うことです。
想定していることは大体起きると思っています。私が行くような場所では、時々、もっと大変なことも起きます。ビッグウォール、困難な壁、高所、そんな場所ではたとえ電話を持っていても誰も助けに来てくれません。それは電話を持っていてもいなくても全く同じ事です。
もし天気予報を入手できたら、何かが変わってしまいます。何をすべきか、山頂アタックをすべきかどうかを決断する瞬間、登るべきなのか、1週間待つべきなのか、雨や雪は降り続けるのか。そういった迷いは孤独の中では混乱の元になります。人が住む街まで 1週間近くかかるような、完全に孤独になるような未開の地の中では、リスクを取るべきかどうかは何度も自問自答しています。しかしながら、自分にとってはそれが内なる欲求です。この大変な冒険を全て経験することが自分の生き方なんです。
ソロで行くことは、大自然の中で全てを経験することです。私はここにいる、日々を生きていると実感できる瞬間があります。だけどそんな瞬間は少ししかありません。なぜなら、生きていることよりも、生きていく局面に注力しているからです。だけど、実際は、自分にとって大事な人のことをより多く考えています。「シルビア頑張れ、行け」といった応援のようなサポートを感じています。
その遠征では、ジャングルの中で 2ヶ月を過ごし、32日間を壁の中で一人で過ごしました。ずーっと雨が降っていて、激しい雨は壁の中では危険で、雨は滝、川のようでした。今回の遠征ではそんな状況を何度も経験しました。天候が非常に悪く、情報の圏外にいたので、天気が良くなるのかどうか、登れるようになるのかどうかも分かりませんでした。天気が良いときに頂上へ向かって登り続けられるかどうか、クライミングを辞めて降りるべきかどうか、情報が無い状況で決断しないといけなかったため、この遠征ではそんなジレンマが本当に大変でした。そんな迷ってる時間、決断しないといけない状況、「何をすべきか、どうすべきか」を助言してくれる人が誰もいなくて完全に一人でした。考えている時間はたくさんありました。天気が良いときは壁から降りるチャンスでもありましたが、頂上に向かって登っていました。なぜかはわかりません。説明するのは難しく、理解するのも大変です。
自分を取り囲む多くの時間が、非常に特殊な状況でした。客観的に、より冷静な観点から決断を下すことは難しいです。冒険の中で、生きている事を信じています。日常とは違う生き方の中で行動すること。全ては本能のままで、一種のサバイバルです。判断は感覚にゆだねていて、もし「無理」って思ったら、降りたでしょう。以前に壁の中で、登るにはリスクがあるとわかってたけど、「登り続けろ、登り続けろ」という感情が自分の中にあったので、登り続けたこともありました。
精神的、肉体的にどんなトレーニングをしているのか良く聞かれます。トレーニングは何もしていません。まったくおかしいかもしれないけど、どんなトレーニングも全くしていません。やってることは、毎日山の中にいてクライミングをしていること。いつも長いルートを登っています。アプローチだったり、下降だったりと、一日中上がったり下がったりしています。でも、ランニングだったり、ボルダリングのようなトレーニングは何もしていません。なぜかはわかりません。ただそれが自分のやり方です。精神的な面でも、特別なことは何もしていません。人工登攀とソロが自分の生き方に繋がっていると信じています。それがとても自然で、はっきりしたことは何もわかりません。
自分にとって単独の遠征計画を立てることは、挑戦について考えさせられる非常に重要なことです。挑戦について語ることは、確実にできることを意味していません。安静な場所ではなく、限界の先にある、挑戦的なことに向かい合うことです。できるかどうかわからないという迷いを体験したい、場面に向かい合いたいんです。「できるかどうかわからない」という、まさにこの点が私の生き方なんです。

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