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『黒部 厳冬の十六日間』 - 佐藤裕介スライドショー

カテゴリー: その他
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6/22 にノースフェイス原宿店で行なわれた佐藤裕介さんのスライドショー『黒部 厳冬の十六日間』を聞いてきました。テーマは黒部横断。ここ 5年間で 4回おこなっているという正月の黒部横断、特に今年の横断をメインに行なわれました。以下スライドショー抄録。



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2008年の正月に初めて長野側から富山側へ抜ける黒部横断をした。池ノ谷で雪崩にあって 1.2km 流され、2人が埋まるも、何とか生き残って脱出する。その後、三ノ窓で 5日間停滞する羽目になるも、剱の山頂を踏んで無事下山した。

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黒部横断の体験は、自分の中では非常に大きく、ピオレドールを受賞したカランカ北壁とも比較できない。冬の黒部では、山から常にプレッシャーを受けながらも、何とか生き残って帰ることがやりがい。
20日分の食料や燃料で荷物の重さは 30kg/1人。冬の黒部の天気は世界的に見てもかなり悪い。そのため、多少悪くても前進する。今年は伊藤仰二さん、岡田康さんと 3人で。

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今年は大谷原 - 鹿島槍ヶ岳 - 十字峡 - 大滝尾根 - 仙人山 - 八ツ峰 - 剱岳の予定で入山。山行はストイックだけど、パーティの雰囲気は明るく、山を楽しんでいた。

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鹿島槍ヶからの下りでホワイトアウトになったため、雪庇を警戒してロープを結んで進んだが、結局牛首山で泊。黒部横断の時は、基本的に雪洞を掘って中にテントを張った。この日は掘った場所が悪く、木が出てきてしまい掘るのに 2-3時間掛かった。

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翌日も天気が悪く停滞。雪洞の入口に 3m程雪が積もり、掘り出すのに 2-3時間掛かった。黒部横断の時の食事は朝と晩がアルファ米 100g、行動食が 300g。停滞時は 2日で 150g。一食でアルファ米 25g と七味唐辛子をお湯に入れるだけの時もある。
黒部川の徒渉は年によって水量が違う。今年は多くて、深い場所は胸よりも上だった。十字峡の上流か下流かでも水量は違う。上流側では靴までの時もある。十字峡に着いたのは夕方だったため、この日は徒渉ポイントの偵察のみ。

翌日に徒渉。徒渉時は全裸に雨具の下だけ着てネオプレーンの靴下を履いてロープを付けて徒渉。荷物はチロリアンブリッジを張って渡した。

その日は近くの水平歩道まで上がって泊。この日は 100m程度しか進めなかった。
当初は剱沢に入り、大滝尾根に取付く予定だったが、剱沢は深いゴルジュ帯で、一昨日降った雪がまだ安定しておらず、雪崩の危険があったため、隣のガンドウ尾根に変更した。しかしながら、大滝尾根を諦めきれず、少し登ったところで聞いた天気予報により、 雪が安定するまで1日待って取付くことに決め、再度十字峡に戻る。

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行程の半分も来てないが、日程の半分を過ごしてしまい、残りはあと10日。10日で残りの日程を消化できるかわからないが、ミーティングをして剱方面に進むことを決定した。黒部横断は山から受けるプレッシャーをかわしながら進む判断が難しいが、魅力でもある。
大滝尾根はひたすら雪との格闘。キノコ雪を切り崩しながら進んだ。トップは空身でロープをフィックスしながら進み、セカンドはユマーリング。これまでこの種のルートには慣れているつもりであったが、これまでの人生で切り崩したキノコ雪の 2倍の雪を切り崩したりと、色々勉強になった。最初の頃はダブルアックスで進んでいたが、後半からはダブルスコップにしたら効率が上がった。

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取付いて 3日目から天候が悪化し全てが雪まみれ。4日目に大滝尾根を抜けて、ガンドウ尾根に合流した。ヒマラヤのピークに登ったほどの充実感があり、非常に嬉しかった。未登でも未知でもピークでもなかったが非常に満足。目指しているのはどれだけもがいたか、どれだけ満足できたか。

ガンドウ尾根に取付いても雪は深く、腰くらいまで埋まり、先頭は交代しながら空身でラッセル。交代したら少し休みたいが、追いかけないとすぐにラッセルした道が埋まってしまう。
仙人山に着いても雪の状態は悪く、不安定なラッセルが続く。残りの日程が 6日しかないため、八ツ峰は諦める。剱を目指すことを考えるも、状態が悪く、天候待ちをしている時間もないため、北側の坊主尾根経由で欅平に下山することに決めた。

樹林帯に入っても楽観できず、天気が悪くて動けなかった。食料を削っていることや、ウェアも濡れ始めていて体力的な消耗が激しく、夜になっても辛かった。

坊主尾根はアップダウンがかなりあり、下りでも腰までのラッセルとなり大変だった。

16日目に欅平に到着。
ここ 5年で 4回黒部横断をしているが、いまだに八ツ峰に取り付けていない。これまで冬の黒部で過ごした時間は 50日を越えるが、無駄な要素は一切なく、とても大切な時間。日本の雪山は目立たないがとても重要。これからも山とどっぷり四つに組んだ旅を続けていきたい。
Q & A コーナー
- 濡れない工夫に関して
手袋は 3セット持って行った。基本的には VBL(Vapor Barrier Liner) システムを使った。濡れに関しては非常に気を使っていて、シュラフに関しても起きたときにはシュラフカバーとの間の結露は拭いていた。靴は 1週間くらいで濡れてくる。外側からではなく内側からの汗による濡れのため、こちらも VBL システムでネオプレーンの靴下を履いていた。行動が終わったときにウールの厚手の靴下に履き替え、ネオプレーンの靴下は裏返して干しておけば翌日までに乾いた。去年のカラコルムでもネオプレーンの靴下で行った。

- 行動の判断に関して
進退の判断に関しては計画書のリーダーとは関係なく、みんなで話し合って決めた。

- 食事に関して
入山前は意識して食べるようにし、体重を増やしてから行った。秋のフリー中心の時期は 58kg、入山時は 63kg。これまでの食事は炭水化物が中心だったので、今年は少し油を増やそうと思っている。



非常に中身の濃いスライドショーでしたが、開始時間が遅かったこともあり、メインのスライドショーがわずかに 40分しかなかったのはやや残念でした。その後の交流会よりもメインのスライドショーの時間をもう少し増やして欲しいと思いました。

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